財務モデリングの資格を取得したいと考えている皆さんへ。本記事では、財務モデリングの基本から資格取得に必要なステップ、そして具体的な学習方法までを詳しく解説します。財務モデリングのスキルは、企業の将来予測や経営判断に不可欠なツールです。このスキルを身につけることで、キャリアアップや業務の効率化に大いに役立ちます。資格取得に向けた学習計画を立てる際の参考にしていただければ幸いです。
ポイント
- 財務モデリングとは
- 資格の種類
- 独学に最適な講座
- 習得までにかかる時間
目次
財務モデリングの資格について
- 財務モデリングとは
- 財務モデリングの資格には何がある?
財務モデリングとは
財務モデリングとは、企業や事業の将来の財務状況を予測し、投資や経営判断をサポートするためのツールです。特にM&A(企業の合併・買収)の際に、対象会社や事業の将来の収益性やキャッシュフローをシミュレーションするために使用されます。このシミュレーションにより、M&Aの投資採算やリスクを評価し、意思決定の基礎を提供します。
財務モデリングには、損益計算書(PL計画)、貸借対照表(BS計画)、キャッシュフロー計算書(資金計画)の3つの財務表を作成し、それらを基に様々なシナリオを検討します。以下では、財務モデリングの具体的なプロセスとポイントについて詳しく説明します。
財務モデリングの実務
PL計画(損益計算書)
PL計画では、対象会社や事業の収益と費用を予測します。まず、売上高の主要な構成要素(例えば、新規顧客数、既存顧客の維持率、平均購入単価など)をモデルに組み込みます。これらの要素は、将来の変動を見越してパラメータ(変数)として設定し、ポジティブ、ベース、コンサバティブといったシナリオ別にシミュレーションします。
また、売上原価や販管費についても同様に、詳細な構成要素に分解し、変動費や固定費を考慮します。M&Aによって期待されるシナジー効果(例えば、コスト削減や売上増加)もモデルに反映させることが重要です。
BS計画(貸借対照表)
BS計画では、PL計画の数値と連動させて、主要な債権債務や運転資本の回転期間(回収期間・支払い期間)を考慮しながら将来の残高を予測します。その他の資産や負債も将来の計画に基づいて増減させ、全体の財務状況を明確にします。
資金計画(キャッシュフロー計算書)
資金計画は、PL計画とBS計画から導き出されるキャッシュフローを3つの要素(営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフロー)に分けて表現します。これにより、企業の資金繰りを明確にし、内部収益率(IRR)などの投資判断指標を算出します。この指標を基に、M&Aの実行可否や投資後の成長戦略を策定します。
財務モデリングのポイント
財務モデリングを効果的に行うためには、以下の3つのポイントが重要です。
説明可能性
過去の業績から将来の計画に移行する際に、重要な指標が合理的な範囲で連続していることが求められます。例えば、計画の2年目に登録数が急に10倍になるといった非現実的な予測ではなく、実現可能性の高い根拠を持ってシミュレーションを行うことが重要です。
シンプルな構造
財務モデルの構造は可能な限りシンプルにし、可変するパラメータも重要なものに絞ります。複雑なモデルは、前提条件の変更に時間がかかるだけでなく、誤りや不整合が発生しやすくなります。シンプルなモデルは、後からの修正や確認が容易です。
再現性の担保
エクセルなどのツールを使用してモデリングを行う際には、高度な関数を避け、誰でも理解できるような構造を目指します。担当者が変わってもモデルを再現できることが重要です。これにより、属人的な偏りや恣意的な操作を防ぎ、透明性の高いモデルを維持します。
Stand by Cを起用する理由
会計士ならではの精緻な計画策定
Stand by Cのメンバーは全員が公認会計士であり、過去の実績から精緻な3表計画の作成に慣れています。減価償却や税金、のれんの償却なども整合性を持ってモデルに反映することが可能です。
デューデリジェンスとの一貫サポート
M&A実行前のデューデリジェンスで発見された事項(収益減少影響額やコスト削減余地など)を財務モデルに反映します。Stand by Cでは、デューデリジェンスと財務モデリングを一貫して行うことで、発見事項を漏れなくモデルに反映できます。
豊富な案件実績
Stand by Cは、大手総合商社やPEファンドのクライアントからの依頼も多く、案件ごとにニーズに合った事業計画を策定しています。これにより、投資判断のポイントを押さえた財務モデリングを迅速に行うことができます。
まとめ
財務モデリングは、企業や事業の将来の財務状況を予測し、重要な経営判断を支援するためのツールです。シンプルで説明可能かつ再現性のあるモデルを作成することで、投資のリスクを管理し、適切な意思決定を行うことができます。Stand by Cのような専門的なサポートを受けることで、より精緻で信頼性の高い財務モデリングが可能となります。
参考
財務モデリングの資格には何がある?
財務モデリングの資格は、企業や事業の財務状況を正確に予測し、投資や経営判断をサポートするためのスキルを認定するものです。この記事では、財務モデリングに関連する資格の種類や取得方法について詳しく説明します。
財務モデリングに関する資格の種類
財務モデリングに関する資格には、国内外でいくつかの種類があります。ここでは、日本および海外の主要な資格について紹介します。
日本の資格
日本では、経済産業省の委託事業として日本CFO協会が主宰するFASS (Financial Accounting Skill Standard) 検定があり、この中にエクセルを用いた財務モデリングのスキルが含まれています。ただし、2022年時点で公式に財務モデリングが試験範囲の一部を構成しているという明確な記載はありません。
海外の資格
海外では、財務モデリングに特化した資格を提供している団体がいくつかあります。中でも有名なのが、Financial Modeling Institute(FMI)とCorporate Finance Institute(CFI)です。これらの団体は、それぞれ異なるアプローチで財務モデリングのスキルを認定しています。
Financial Modeling Institute(FMI)の資格
FMIは、財務モデリングに関する世界的に認知された資格を提供しています。FMIが提供する資格は以下の3段階に分かれています。
- Level 1: Advanced Financial Modeler (AFM)
- Level 2: Chartered Financial Modeler (CFM)
- Level 3: Master Financial Modeler (MFM)
AFM(Advanced Financial Modeler)
AFMは、FMIが提供する最初のレベルの資格で、財務モデリングの基礎スキルを認定します。この資格を取得することで、名刺に「AFM」の肩書きを加えることができ、CFM試験の受験資格も得られます。
試験の概要
- 試験日程:年に2回、4月と10月に実施。
- 試験会場:世界25か国以上の都市で実施。東京でも受験可能。
- 受験料:61,000円(早期申込割引や学生割引あり)。
- 試験内容:4時間の試験で、企業の財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を構築する。試験は全て英語で行われ、財務や会計の前提知識が不要な問題が出題される。
試験の具体例
- 5年間の中期事業計画モデルの作成。
- 売上、営業費用、設備投資、減価償却、法人税等の見積。
- 損益計算書・キャッシュフロー計算書・貸借対照表の三表の作成。
- ベースケース、楽観ケース、悲観ケースの各シナリオでの事業シミュレーション。
練習問題 公式ウェブサイトに過去の問題と回答例が公開されています。受験準備に必要な時間は約100時間ですが、既に業務でモデリングを行っている方や自信のある方は、より短時間で合格できるかもしれません。
CFM(Chartered Financial Modeler)
CFMは、AFMの次に位置する資格で、より高度な財務モデリングスキルを認定します。
試験の概要
- 試験内容:4時間の試験で、4~6問の問いに答える形式。
- 出題範囲:実務で必要な会計、財務、ファイナンス、投資やビジネスに関する知識も問われる。多通貨でのコスト計算、加速償却、借り入れ、コベナンツ、転換社債などの複雑な条件設定が求められる。
練習問題 AFMと異なり、練習問題は公開されていませんが、試験準備には公式の学習リソースが利用できます。
取得のメリット
FMIの資格を取得することで、以下のメリットがあります。
- スキルの証明:財務モデリングの高度なスキルを客観的に証明できる。
- キャリアの向上:財務アドバイザリーやコンサルティング企業でのキャリアアップに役立つ。
- ネットワーキング:FMIコミュニティにアクセスでき、業界の専門家とのネットワーキングや情報交換が可能。
まとめ
財務モデリングの資格は、財務モデリングスキルを証明し、キャリアを向上させるための重要なツールです。特に、FMIの資格は国際的に認知されており、財務モデリングの専門家としての信頼性を高めることができます。資格取得に向けて、公式ウェブサイトや学習リソースを活用し、しっかりと準備を進めることが大切です。
財務モデリングの資格の補足事項
- 財務モデリングを独学で習得するには
- 財務モデリングの資格習得にかかる時間
- 財務モデリングの資格についてのまとめ
財務モデリングを独学で習得するには
財務モデリングを独学で学びたい方に向けて、今回はおすすめの講座や学習方法を紹介します。これから財務モデリングに挑戦する方が、自分のペースで効果的に学べるように、具体的なアプローチをお伝えします。
財務モデリングの独学方法
独学で財務モデリングを学ぶためには、以下の手順を踏むと効果的です。
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基礎知識の習得
- 会計の基礎:決算書の読み方を理解します。例えば、「売上高 - 売上原価 = 売上総利益」や「資産 = 負債 + 純資産」などの基本的な概念を学びます。
- 企業価値評価:企業価値評価の基本を学びます。これはDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法や類似企業比較法などの方法を理解することを含みます。
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エクセルのスキルアップ
- エクセルの基本操作:ショートカットや基本的な関数の使い方を習得します。エクセルを使いこなすことが財務モデリングの基本です。
- エクセルの高度な機能:ピボットテーブルやマクロ、データ分析ツールの使い方を学びます。
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財務モデリングの実践
- 財務モデルの作成:過去の財務データを使って、実際に財務モデルを作成します。これには、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)を連動させるモデルが含まれます。
- 練習問題に取り組む:独学で使える良質な練習問題を解くことで、スキルを磨きます。例えば、過去の財務データを基にしたシミュレーションを行います。
おすすめの講座
独学で財務モデリングを学ぶためのおすすめのリソースをいくつか紹介します。
英語の有料講座
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Corporate Finance Institute (CFI)
- 内容:DCF、LBO、M&Aといった基本的なモデリング手法を学べます。また、不動産やプロジェクトファイナンスのモデルも学べます。
- 特徴:エクセルやパワーポイントの講義も含まれており、実務で使えるテンプレートが豊富です。
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- 内容:CFIと同様に、モデリングスキルを身につけるための包括的な講座です。
- 特徴:わかりやすいビデオ講義で、実践的なスキルを学べます。
英語の無料講座
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- 内容:上級者向けの詳細な解説と、ダウンロード可能なエクセルテンプレートが豊富です。
- 注意点:初学者には難易度が高いため、基礎を学んだ後のステップアップに最適です。
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- 内容:企業のモデリングやプロジェクトファイナンスのモデリングを学べます。
- 特徴:無料ながら非常に質の高い内容を提供しています。
日本語の有料講座
- 壁の道の向こう側
- 内容:オペレーティングモデルやキャッシュスイープモデル、DCFモデルなど、多岐にわたる財務モデリングを学べます。
- 特徴:リーズナブルな価格で、実践的なスキルを学べます。
実務経験を積む方法
財務モデリングのスキルをさらに高めるためには、実務経験を積むことが重要です。以下の方法で実務経験を積むことができます。
- インターンシップ:金融機関やコンサルティングファームでのインターンシップを通じて、実際の業務を経験します。
- プロジェクト:自分で架空のプロジェクトを設定し、財務モデルを作成してみることも有効です。例えば、過去の企業の決算データを使って、将来の財務状況を予測するシミュレーションを行います。
- ネットワーキング:財務モデリングのスキルを持つ専門家とネットワークを作り、アドバイスを受けたり、フィードバックをもらうことも重要です。
まとめ
財務モデリングを独学で学ぶためには、基礎知識の習得、エクセルスキルの向上、実践的な練習問題の解決が必要です。また、有料・無料のオンライン講座を活用することで、効率的に学習を進めることができます。実務経験を積むことで、さらにスキルを向上させることができます。これらのステップを踏むことで、財務モデリングのスキルを着実に身につけることができるでしょう。
財務モデリングの資格習得にかかる時間
財務モデリングの資格を取得するためには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。これは、あなたの予備知識や学習方法によって異なりますが、一般的には200時間から500時間程度とされています。ここでは、その詳細について説明していきます。
財務モデリングの習得にはどれくらいの時間が必要?
財務モデリングを学び始める前に、まず基本的なエクセル操作や会計、企業金融の知識を持っていることが前提となります。これらの予備知識がない場合は、それぞれの習得に追加の時間がかかることを考慮してください。
エクセルの予備知識の習得(20時間~50時間)
エクセルの基本操作は財務モデリングの前提条件です。SUM関数や基本的な四則演算、行・列・シートの操作、フォーマット調整などをスムーズに行えるようになる必要があります。これには20時間から50時間程度がかかります。
会計の予備知識の取得(10時間~20時間)
財務モデリングは、決算書に基づいて行うため、決算書が読めることが重要です。決算書の各項目の意味を理解し、基本的な会計の概念(キャッシュフローと利益の違いなど)を学ぶためには、10時間から20時間程度が必要です。
企業金融の予備知識の習得(50時間~100時間)
財務モデリングには、リスク・リターンの考え方やCAPM、DCF法などの企業金融の知識が必要です。大学の授業で言えば4単位分に相当し、これには50時間から100時間程度がかかります。
財務モデリングの学習ステップ
財務モデリングの学習は、基本的な知識を身につけた後に本格的に始まります。ここでは、実際にモデルを作成するために必要な学習ステップと所要時間を紹介します。
財務モデリングの基礎学習(30時間~50時間)
財務モデリングの基本的な知識を座学で学びます。会計や企業金融の予備知識を活かし、モデル作成の基本を理解します。この段階では、教材や講座を利用して「モデルの作成方法」を学ぶことが重要です。
財務モデリングのトレーニング(100時間~300時間)
財務モデリングは実践的なスキルであり、トレーニングを通じて習得することが求められます。5~6社分の財務モデルを1から作成することで、実際の業務で使えるレベルに到達します。1つ目のモデルを完成させるには多くの時間がかかりますが、繰り返し練習することで、作成時間は短縮されます。
財務モデリングの習得に簿記は必要か?
簿記の知識は必ずしも必要ではありません。簿記は決算書を作成するためのルールであり、財務モデリングは作成済みの決算書を使って分析を行います。決算書が読めれば十分であり、決算書を作成する必要はありません。財務モデリングに必要な知識は、どのようにモデルを構築し、数式を組み立てるかという実践的なスキルです。
まとめ
財務モデリングの資格を取得するためには、基本的なエクセル操作、会計知識、企業金融知識の習得から始め、実際のモデル作成を通じてスキルを磨いていくことが必要です。総合的には200時間から500時間の学習が必要とされますが、これは予備知識や学習方法によって異なります。独学で学ぶ場合は、効率的な学習計画を立て、実践的なトレーニングを重ねることが成功への鍵です。
財務モデリングの資格についてのまとめ
- 財務モデリングは企業や事業の将来の財務状況を予測するツールである
- M&A時に対象会社の収益性やキャッシュフローをシミュレーションする
- 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を作成する
- 売上高や費用を予測し、シナリオ別にシミュレーションする
- 債権債務や運転資本の回転期間を考慮しながら予測する
- キャッシュフローを営業、投資、財務の三要素に分けて表現する
- 説明可能な予測を行うことが重要である
- モデル構造はシンプルにし、重要なパラメータに絞る
- 高度な関数を避け、誰でも理解できる構造を目指す
- 財務モデリングにはエクセルの基本操作が前提である
- 基本的な会計知識が必要である
- 企業金融の知識も求められる
- 財務モデリングの実践にはトレーニングが重要である
- 簿記の資格は必ずしも必要ではない
- 効率的な学習計画を立てることが成功の鍵である